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脳腫瘍

はじめに

脳腫瘍には、脳組織自体から発生した原発性脳腫瘍と、脳以外の臓器のがんが転移した転移性脳腫瘍があります。原発性脳腫瘍のうち、悪性度の高いものは、神経を支える支持細胞であるグリアが腫瘍化した悪性グリオーマ、リンパ球が腫瘍化した悪性リンパ腫などがその代表格です。転移性脳腫瘍は、がんの脳転移のため、すべてが悪性で、原発部位では、肺がんが約50%と最も多く、ついで乳がん、消化器がんに多い傾向がみられます。悪性脳腫瘍は全年齢層で発症しますが、中年以降に多く発症する傾向がみられます。

脳腫瘍の症状

脳は、大脳、間脳、小脳、脳幹と呼ばれる構造から構成されておりますが、脳腫瘍の症状は、その腫瘍が発症する脳の部位により、様々です。例えば、大脳の運動機能に関係する部位に発症すれば、運動機能が低下したり、痙攣発作が起きますし、言語機能に関する部位に発症すれば、言葉が話せなくなったり、理解できなくなったりします。小脳に発症すれば、めまい、ふらつきが生じたり、脳幹に発症すれば、ものが二重に見えたり、食物が飲み込めなくなったりします。

脳腫瘍が次第に大きくなると、頭痛、嘔気などが発現し、やがて意識障害が発生することもあります。また、腫瘍が小さくても、脳内の髄液(1日約450mlの産生)の流れを妨げて、水頭症(脳内に髄液が異常に貯留する状態)となり、頭痛、嘔気が発現することもあります。

脳腫瘍の検査

脳腫瘍が疑われた時の検査
頭部CT、頭部MRI

これにより、まず脳腫瘍の有無を確認します。ついで、造影剤を使用したり、脳内の水分含量の変化を調べたりすることで、脳腫瘍の種類を調べます。

広範囲体幹CT、全身PET

悪性リンパ腫や転移性脳腫瘍が疑われる時、脳以外の臓器の腫瘍性病変の有無を調べます。

血液検査、髄液検査

悪性リンパ腫や転移性脳腫瘍が疑われる時、血液や髄液中における、種々の腫瘍マーカー(健康時では低い検出量だが、腫瘍になれば上昇する傾向のある物質)を調べます。

脳腫瘍の検査所見
悪性グリオーマ

頭部CT、MRIにおいて、単発、不整形で、造影剤によりring状に強く造影される傾向にあります。腫瘍周囲には広範な脳浮腫(水分含量の増加)が見られる傾向にあります。

悪性リンパ腫

頭部CT、MRIにおいて、単発もしくは多発性で、造影剤により腫瘍が強く均一に造影される傾向にあります。腫瘍周囲には広範な脳浮腫が見られる傾向にあります。脳原発の悪性リンパ腫では、広範囲体幹CT、全身PETにおいて、脳以外の臓器に腫瘍を認めません。血液検査、髄液検査において、β2-microglobulin、可溶性IL-2受容体などの腫瘍マーカーが上昇する傾向にあります。

転移性脳腫瘍

頭部CT、MRIにおいて、単発もしくは多発性で、造影剤により腫瘍がring状に造影される傾向にあります。腫瘍周囲には広範な脳浮腫が見られる傾向にあります。広範囲体幹CT、全身PETにおいて、脳以外の臓器にしばしば腫瘍が見られます。血液検査、髄液検査において、原発がんの発生で上昇する腫瘍マーカーが、上昇する傾向にあります。例えば、肺がんの脳転移では、CEA、CYFRA、ProGRPなどが、消化器がんの脳転移では、CEA、STNなどが、乳がんの脳転移では、CA-125、CA15-3、CEAなどが上昇する傾向にあります。

脳腫瘍の診断

脳腫瘍の診断は、頭部CT、頭部MRI、広範囲体幹CT、全身PET、血液検査、髄液検査などで、ある程度まで推定できます。

しかし、治療方針を決定するには、脳腫瘍の確定診断が必要な場合があります。その時は、手術により腫瘍を摘出し、その摘出した腫瘍から病理標本を作製し、顕微鏡観察により病理診断します。病理標本は、標準的な染色だけでなく特殊染色を行い、脳腫瘍を詳細に分類し、悪性度の評価も行います。

脳腫瘍の治療

悪性グリオーマの治療

この腫瘍に対する治療の基本は、まず手術で、腫瘍をできるだけ摘出することです。それは、腫瘍を広範囲に摘出すると、その後の生存期間が延長することがわかっているからです。ただ、この腫瘍は、周囲の健全な脳に浸潤する性格を持っており、手術で腫瘍を全て摘出することは、不可能です。また、腫瘍の存在部位により、手術摘出に制限が生じたり、摘出自体が困難なこともあります。例えば、大脳における運動野、言語野といわれる領域に腫瘍がある場合、無制限に腫瘍摘出を行うと、術後に麻痺や言語障害などが生じます。そこで、実際の手術では、ナビゲーションや神経モニターを使用して、安全に摘出できる範囲をきめて、腫瘍を摘出します。
病理診断にて悪性グリオーマであることが確認されたら、残存腫瘍、浸潤部腫瘍に対する術後の補助療法を行います。まず、放射線治療+テモゾロミド(TMZ)併用療法(60Gyの放射線を6週間かけて行い、その期間中42日間 TMZを連日経口投与する)を行います。ついで、放射線終了後4週間おきに少なくとも6回、TMZの5日間連日経口投与を行います。

悪性リンパ腫の治療

この腫瘍は、前記の諸検査でも、他の脳腫瘍と紛らわしいことがあり、手術によって腫瘍を摘出し、病理診断による確定診断を得ることが必要です。ただ、この腫瘍は、放射線治療および化学療法に感受性が強く、著しい効果を期待できるため、手術においては、広範囲に腫瘍を摘出する必要はなく、病理診断に必要なだけの腫瘍を摘出します。
病理診断にて悪性リンパ腫であることが確認されたら、早期に、メトトレキサート(MTX)の大量化学療法(点滴による抗がん剤投与)を行います。これを、2-3週間おきに、少なくとも3回繰り返します。その後、脳全体に放射線治療(30-40Gyの放射線照射)を4-5週間かけて行います。

転移性脳腫瘍の治療

この腫瘍は、前記の諸検査で、大抵の場合診断がつきますので、確定診断目的の手術は原則いたしません。この腫瘍に対する治療は、原発がんの状態や、脳以外の臓器への転移の状態などが、治療方針の決定に大きく関わります。治療には、手術および放射線治療を様々に組み合わせて、脳腫瘍の制御をめざす治療と、保存的にとりあえず脳浮腫の改善のみをめざす暫定的治療があります。
まず、脳以外のがん病巣の状態から余命が6ヶ月以内の時は、脳腫瘍に対して原則手術はせず、放射線治療(全脳への照射)を行います。ただ、脳腫瘍の摘出により、患者さまの生活レベルの向上が目指せるときや、脳腫瘍のため、脳ヘルニア(腫瘍による圧迫で脳の構造がゆがみ、生命が脅かされる状態)が生じ、生命が脅かされている時など、腫瘍を摘出することはあります。
ついで、脳以外のがん病巣の状態から余命が6ヶ月以上の時は、脳腫瘍が単発であれば、手術+放射線治療(全脳への照射)を行います。 脳腫瘍のサイズが長径3cm以下で、個数が4ヶまでなら、放射線治療(定位照射)単独で治療することもあります。
一方、脳以外のがん病巣の状態から余命が3ヶ月以内の時は、保存的に脳浮腫の改善をめざす治療を行います。

当院における脳腫瘍治療の特徴

当院では、基本的には、前記で説明した本邦での標準的な治療方法で脳腫瘍治療を実践しています。ただ脳腫瘍の治療は、長期におよぶことが多く、患者さま、御家族の十分な御理解なしに、進めていくことはできません。そこで、治療方法の決定においては、患者さま、御家族と十分に話し合い、希望をきいて、場合によっては標準的な治療から逸脱した治療を行うこともあります。

さて、脳腫瘍治療で、最も重要な治療手段の一つは、とりもなおさず手術です。手術では、できるだけ体への負担を少なく、術前に計画した通りの腫瘍の摘出を、合併症をおこさずに実行することが重要です。当院ではそのために、術中にはナビゲーションを用いて、腫瘍の摘出範囲を正確に同定し、また脳神経モニターにて、脳の働きをリアルタイムにモニターしながら、高解像度の顕微鏡にて、腫瘍の摘出を行っております。

ついで、脳腫瘍治療で、手術にならんで重要な治療手段は、放射線治療です。放射線治療においては、複雑な腫瘍形態に合わせて照射を行い、周囲の健常な脳への影響を最小限にできる「強度変調放射線治療」が可能な最新の機種が、当院に導入され、今後使用予定です。

また、脳腫瘍治療で、悪性グリオーマ、悪性リンパ腫においては、抗がん剤治療が重要な位置を占めます。当院では、悪性グリオーマにおいては、外来維持療法において、TMZの5日間連日経口投与を6クールだけで終了せず、できるだけ長期間、継続しております。また、インターフェロンを併用して、治療効果を高めています。