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診療科・部門案内

心臓血管外科

腹部大動脈瘤に対する「ステントグラフト内挿術」をはじめました

1. 腹部大動脈瘤とは?AAA: abdominal aortic aneurysm

腹部大動脈瘤(AAA)とは、主に動脈硬化等を原因として血管壁がもろくなり風船様に拡張したもので、破裂するまで無症状のことが多く、一旦破裂すると死亡率は80~90%にも上るといわれています。
正常では腹部大動脈の直径は約20mmですが、45~50mmになると破裂のリスクが高くなり、治療対象となります。また、動脈壁の一部が拡張するタイプの嚢状瘤では大きさが小さくても破裂のリスクが高くなります。動脈瘤自体に対する薬物治療は存在しませんので、動脈瘤の直径が小さい時には破裂・拡大予防として血圧を下げるお薬が使われ、定期的に経過観察されます。しかし、破裂のリスクが高まる大きさになると、手術的に人工血管置換あるいはEVARを行うことが唯一の治療法となります。

2.AAAの治療について

AAAの治療については、おなかを開けて大動脈瘤を人工血管で置換し、縫合糸で縫合する手術が一般的に行われていますが、最近ではカテーテルを挿入して人工血管を患部に装着する『ステントグラフト内挿術(EVAR)』が普及し始めています。EVARは国内10学会から構成される「日本ステントグラフト実施基準管理委員会」http://stentgraft.jp/、一般の方向けのサイトもございますのでぜひご覧ください)によって認定された施設・医師のみが行うことのできる手術です。当院でも2011年9月に腹部大動脈瘤ステントグラフト実施施設に認定され、EVARを開始しました。

3.ステントグラフト内挿術(EVAR)とは?

通常の開腹手術による人工血管置換術では10~20cm程度の腹部正中切開を行います。 それに対してEVARでは、両方の足の付け根に3~4cmの小切開を行い、動脈内にカテーテルを挿入して動脈瘤の部位でステントグラフトを放出・内挿します。ステントグラフトとは、人工血管にステントと呼ばれるバネ状の金属を取り付けたもので、これを圧縮して細い管(デリバリーカテーテル)に収納し疾患部位まで運ばれます。人工血管は外科手術のように縫いつけるわけではなく、バネの力と血圧によって拡張し、血管壁に固定されますので、手術時間も開腹手術と比べて短くなります。
大動脈瘤自体は切除されることなく残りますが、ステントグラフトで動脈瘤内への血流が遮断されますので、動脈瘤は血栓化し、次第に縮小していきます。EVARの手術リスクは1~2%と開腹手術(2~4%)に比べて低くなり、また手術創も小さく、おなかも開けませんので、食事やリハビリもすぐに開始することができます。また、入院期間も短くなるため、特に高齢の方や全身的合併症等のある重症の方にも有用と考えられます。

図3術前CT; 最大径50mmの腹部大動脈瘤

図4術後CT; ステントグラフト留置により動脈瘤内の血流は遮断されて血栓化している

図5術前CT血管造影

図6EVAR 術後CT血管造影

4.手術方法はどのようにして決めればいいのでしょうか?

EVARはすべての患者様に行うことができるわけではなく、ステントグラフト内挿に伴う解剖学的要件(瘤の部位、形態、動脈壁の性状など)が細かく決められています。そのため、術前CTを詳細に検討し、さらには全身状態等も十分に考慮してEVARの適応を決めることになります。しかし、今後デバイスの改良・遠隔成績の確立によって、EVARの適応範囲は拡大される可能性が高いと考えられています。当科でも解剖学的適応があれば、積極的にEVARを行っていく方針ですので、特に全身状態等の問題でAAAの治療をあきらめていた場合でも今一度適応について再度検討させていただきます。

5.EVAR術後不可欠な経過観察・評価について

術後の経過観察は、通常1か月、3か月、6か月、その後1年ごとに受診するよう勧められますが、場合によってはさらに短期間で受診していただくこともあります。その際、通常のエックス線、CTによる検査及び診断が行われ、血液検査や超音波検査などが含まれることもあります。
これらの検査は、治療の成果や何らかの経時的変化を評価するために実施されます。これらにより、動脈瘤内への血液の再流入や動脈瘤の拡大が発見される場合もあり、必要に応じて追加治療を行う場合があります。

腹部大動脈瘤についての詳細は心臓血管外科 谷村までご相談ください。

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