医療法人愛仁会 高槻病院

診療体制

病理医は聴診器や検眼鏡を持って患者さまを直接診察することはありませんが、一方で患者さまの治療方針を決定する重要な病理診断を行い、また一方で不幸にして亡くなられた患者さまの病理解剖(剖検)を行い、臨床診断と治療が適切であったか否かを検証しています。

がん診療において、病理診断の果たす役割は、年々重要性を増してきています。一口に「がん(=悪性腫瘍)」と言っても、その種類は非常に多岐にわたり、たとえ同じ臓器であっても、最適な治療法は腫瘍の種類や進行度によって異なります。病理医は病巣を直接観察することで、通常の診察・血液検査や画像診断では得ることのできない詳細な情報から、腫瘍についての最終診断を行います。そこには良性/悪性の判別はもちろんのこと、腫瘍の種類、進行度など、治療方針の決定に必要不可欠な項目が含まれています。つまり、病理診断なくして「がん」の治療はできないのです。

重要であるがゆえに、高い診断精度が求められますが、一方で時間的制約という、精度とは相反する条件が存在します。特に、手術中に方針を決定するための迅速診断の際には、通常の標本よりも観察の難しい凍結切片をもとに、極めて短時間のうちに診断を下さなければならず、非常に高度な診断技量が求められます。しかし一人の人間の能力には限界があり、残念ながらどれほど熟達した病理医でも百発百中というわけにはいきません。これを補うには、複数の病理医が同一標本を観察し、議論しながら意見をまとめ上げるプロセスが不可欠です。幸い当科では現在、常勤3名・非常勤4名の若手〜ベテラン病理医が診断に従事し、常に意見を交わしながら診断を進めています。さらに必要に応じて、領域ごとの外部エキスパート病理医に相談する体制が整えられており、大きな病院でも病理医は0〜1名しか所属していない施設も多数存在する中、とても恵まれた「がん」診断環境にあると言えます。

最近、病理に求められるようになった新たな検索項目として、コンパニオン診断が挙げられます。これは、例えば分子標的薬を用いたがん治療を実施するにあたり、腫瘍細胞が標的とする分子を発現しているか否かを免疫染色により検討し、対象となる患者さまへの治療の適否を判定するものです。当然ながら標的分子を発現している場合には、当該分子標的薬の効果が強く期待され、治療の適応と判定されることになります。悪性リンパ腫に対するリツキシマブ、乳癌や胃癌に対するハーセプチン、肺癌に対するクリゾチニブなどが代表的なものですが(図;陽性腫瘍細胞は茶色に染色されている。)、当科ではこれらの染色用抗体を常備し、迅速な結果判定・報告が可能な体制を整えています。今後、コンパニオン診断はさらに種類を増していくであろうと考えられますが、新たな項目が確立されるごとに、タイムリーに対応していきたいと考えています。

CD20(リツキシマブの標的分子)陽性の悪性リンパ腫
HER2(ハーセプチンの標的分子)陽性の乳癌
ALK(クリゾチニブの標的分子)陽性の肺癌。

組織診

組織診とは生検材料及び手術材料を顕微鏡的に診断することを言います。
生検材料として、胃、大腸、子宮頚部、子宮内膜、肺、心筋、肝臓、腎臓、骨髄、胸膜、前立腺、皮膚、乳腺、甲状腺、リンパ節、鼻腔粘膜、脳、抹消神経、筋肉等があります。

手術材料として、食道、胃、大腸、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、膀胱、肺、咽頭、喉頭、唾液腺、乳腺、子宮、卵巣、骨、関節、皮膚等があります。

標本の作り方

具体的な標本の作り方をご説明します。

  1. 手術的に採取された臓器(食道)をホルマリンで固定し、病変部を肉眼的に観察します。
  2. 病変部を2×3cm角に切り出し、プラスチックのケースに入れます。
  3.  
    切り出し検体をを入れたケースをアルコールで脱水し、パラフィンを浸透させます。写真の機械を包埋器といいます。
  4.  
    切り出した臓器(食道)がプラスチックケース内でパラフィンに包埋されたところです。
  5.  
    パラフィンブロック(臓器を包埋したパラフィンの塊)を3ミクロンの厚さに薄く切っているところです。これを薄切作業といいます。
  6.  
    紙のように薄いパラフィン切片を水に浮かべてしわをのばしています。
  7.  
    スライドガラスにパラフィン切片を貼り付けたところです。(染色していないので無色です。
  8.  
    HE(ヘマトキシリン・エオジン)染色を行うと食道が紫色と桃色で染まってきます。
  9.  
    写真8のスライドガラスを顕微鏡で観察した時に見える低倍率の食道の組織像です。

細胞診

細胞診とは病変部を綿棒でこすりとったり、注射針で穿刺、吸引して得られた細胞検体及び喀痰、尿、体腔液(胸水、腹水、心嚢水)といった液状の検体をスライドガラス上に塗った細胞標本を診断することをいいます。組織診と異なる点は細胞標本をあらかじめスクリーナーが観察し、そのあとで医師が診断します。

迅速病理診断

迅速診断とは手術中に臓器の一部が取り出され、5分〜10分で手術中に病理診断を報告する病理医の重要な職務のことです。病変が良性か悪性か、手術断端や所属リンパ節への転移の有無を確認し、手術中に術者に報告します。それにより手術方針や切り取る範囲が決定されるのですから、いかに重要な職務かお判りいただけると思います。

病理解剖

不幸にして亡くなられた患者さまの全身臓器を肉眼的、顕微鏡的に観察し、病気の成り立ち、死因、治療効果などを形態学的に判断するとともに最終診断を下します。臨床的には思いもよらなかった病気や病態が隠されている場合も少なくないので、今後の診断や治療に果たす役目は計りしれません。

スタッフ

医師名 職名 資格
伊倉医師 伊倉 義弘 主任部長 日本病理学会認定病理専門医
日本病理学会病理専門医研修指導医
日本臨床細胞学会細胞診専門医
日本臨床細胞学会細胞診指導医
岩井医師 岩井 泰博 部長 日本病理学会認定病理専門医
日本病理学会病理専門医研修指導医
日本臨床細胞学会細胞診専門医
日本臨床細胞学会細胞診指導医

医師(病理専門医、細胞診指導医):常勤2名、非常勤4名
検査技師:6名(その内5名がスクリーナー)

実績

  平成
5年度
平成
10年度
平成
15年度
平成
20年度
平成
25年度
平成
29年度
組織診数 4,451 4,477 4,602 5,603 5,765 5,720
細胞診数 8,527 8,941 12,097 10,967 7,794 6,629
迅速診数 23 68 89 65 95 126
剖検数 74 74 72 34 14 13
剖検率 37.9% 27.3% 20.3% 11.2% 4.2% 3.9%

組織診数

細胞診数

迅速診数

剖検数

剖検率

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