医療法人愛仁会 高槻病院

器官発達学研究室

当研究室は小児脳神経外科の原田敦子(室長)と小児麻酔科医の土居ゆみで構成されています。発達段階にある小児を対象に外科的、または手術や麻酔に関する観点から研究を行います。現在行っている研究テーマについて概説します。

1. 難治性脳形成障害症の病態解析と治療法開発

当研究室では、厚生科研による多施設共同研究(主任研究者小崎健次郎)の一環として、①胎児診断における難治性脳形成障害症の診断基準の作成、及び②新規治療法開発に向けた病態解析研究を支援する、臨床病態、画像情報、遺伝子情報、患者由来生体試料(組織・細胞・DNA)などのデーターバンクの構築を目的として開始された難治性脳形成障害症ネットワーク(主任研究者;金村米博)に参加しています。
当院では、出生前診断された症例を中心に、症例登録協力施設として2017年12月時点で118件の症例登録をしています。患者生体試料として、DNA試料、培養細胞試料を分離・樹立し、各々保管しました。25件でL1CAM, AKT3,PIK3AC,COL4A1, PTEN, FGFRなどの遺伝子異常が同定されています。大阪医療センター臨床研究センター幹細胞研究室では、これら患者由来試料から分離した線維芽細胞、神経幹細胞、間葉系細胞(臍帯由来)、血液細胞の特性解析に既に着手しており、今後はさらにそれら細胞から疾患iPS細胞の樹立を行いその解析を実施していきます。

2. レーザー計測装置とミシガン大学式頭蓋形状誘導ヘルメットを用いた頭位性斜頭の治療

赤ちゃんの頭の形への関心の高まりから、頭位性斜頭(いわゆる向き癖)による頭蓋変形に対して、頭蓋形状誘導療法(ヘルメット治療)が欧米では普及してきています。日本でも東京女子医科大学や成育医療センターで治療が行われています。頭蓋形状誘導ヘルメットは医療器具として日本ではまだ認められていないため、倫理委員会で承認を得たうえで、当院でも2015年にヘルメット治療が開始されました。2017年末までに140例に対して治療を行い、症例が蓄積してきましたので、データをまとめていきたいと考えています。

3. 全身麻酔を必要とする小児が受ける身体的・心理的負担が及ぼす影響

成人では麻酔なし、あるいは局部麻酔などで行える手術・検査であっても、子どもには全身麻酔が必要なことがあります。子どもは子どもなりに手術や検査を受けるにあたり、年齢相応の身体的・心理的負担があります。
全身麻酔や周術期のストレスが小児の身体やその後の発達におよぼす影響を調査し、それらを軽減させるための因子を検討します。

4. 検査のため全身麻酔を受ける小児の気道に麻酔薬が及ぼす影響

検査のために安静や不動化が必要な際、小児の場合、多くは鎮静剤や麻酔薬の投与を受けます。鎮静には様々なレベルがあり、それらは一連のものとされており、鎮静は容易に全身麻酔へと移行し、気道の開通性は危うくなりえます。
安全に気道を維持し、確実で質の高い検査を行うための最適な方法を分析します。

5. 精神運動発達障害を伴う前頭縫合早期癒合症に対する減圧的頭蓋形成術の効果・安全性に関する研究

通常、前頭縫合早期癒合症(三角頭蓋)に対しては形態的な改善を目的とした手術を行いますが、減圧的頭蓋形成術を行うことにより、精神運動発達遅滞が改善するという報告が散見されるようになりました。
順天堂大学と共同研究という形で倫理委員会の承認をいただき、2014年より研究を開始しました。同意の得られた三角頭蓋の患者様に対して、順天堂大学と共通のプロトコールにのっとった術前検査、手術方法、術後評価を行って、結果を解析しています。

6. 水頭症治療における、シャント機能不全を引き起こす原因関連因子の解析

小児の水頭症に対する脳室腹腔短絡術(シャント手術)の治療成績は向上しているものの、シャント機能不全は依然一定の割合で発生しています。そこで、シャント機能不全を引き起こす原因をつきとめるため、日本水頭症脳脊髄液学会主導で、小児水頭症治療の調査が行われています。
室長が同学会の評議員を務めていることから、参加を要請されており、症例を登録しています。

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7. 脊髄髄膜瘤の治療と予後に関する後方視的研究

近年脊髄髄膜瘤の8割ほどが胎児期に診断されるようになっています。胎児期に診断されている脊髄髄膜瘤の胎児は予定帝王切開で出生し、予定手術で脊髄髄膜瘤の修復を受けられることから、比較的良好な成績が得られています。一方、欧米から胎児期に髄膜瘤を修復することにより機能予後や水頭症の合併率が改善するという報告がなされました。胎内手術による早産のリスクや倫理的な問題から、日本では胎内手術は現時点では行われておりませんが、今後実施される可能性があります。
将来の胎児治療をふまえて、大阪大学医学部が中心となり、現行治療(出生後の髄膜瘤修復術)の評価を行うことになりました。当院もこの研究に参加しておりますので、当院に通院中の脊髄髄膜瘤の患者様には、匿名という形でデータを提供していただいています。

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8. グリオーマにおける化学療法感受性の遺伝子指標の検索とそれに基づくテーラーメード治療法の開発

原発性脳腫瘍で一番頻度の高いグリオーマ(神経膠腫)に対する治療は、近年腫瘍細胞の遺伝子型によって、テーラーメードで行われるようになってきています。
大阪医療センター金村米博先生が中心となり、関西地区の脳腫瘍の遺伝子解析が行われており、当院もこの研究に参加しています。患者様の同意が得られた場合、金村先生の元に腫瘍組織を送り、腫瘍の遺伝子解析をしていただくことにより、化学療法の薬剤の決定や予後予測が可能となっています。

室長:原田 敦子

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